家探しを始めると、誰しも一度は「新築のキラキラしたモデルハウス」に心を奪われるものです。
最新のキッチン、高い断熱性、そして何より「誰も住んでいない」という特別感。
私たち夫婦も例外ではなく、最初は新築注文住宅や分譲一戸建てを中心に見て回っていました。
しかし、営業担当者から提示された「月々の返済シミュレーション」を眺めていたとき、ふと、冷静な自分に引き戻されたのです。
1. 「借りられる額」と「返せる額」は違う
住宅ローンの審査では、驚くほど大きな金額を「借りる」ことができます。でも、それはあくまで銀行が「貸しても大丈夫」と判断した額。私たちが「無理なく返せる額」とは別物です。
当時のわが家の家計簿と、これから数十年続く人生のロードマップを照らし合わせてみました。
- 子どもたちの教育費: これから大学卒業まで、一体いくら積み立てる必要があるのか。
- 自分たちの老後資金: ローンを完済した後、手元にいくら残っているべきか。
- 家族の思い出作り: 年に一度の旅行や、週末の外食。これを「ローンがあるから」と一生我慢し続けるのか。
そう考えたとき、提示された「手取りの約3割」を占めるローン返済額は、わが家にとって明らかに「重すぎる」と感じたのです。
[Tips]
物件探しを始めるにあたり、まずはゴール(必要額)を逆算しました。
【前提条件】
家族構成: 40代夫婦、子(1人)※当時
・住宅予算: 2,000万円〜3,000万円以内
・完済目標: 80歳手前(35年ローン想定)
【将来必要になる概算額】
・教育費:約1,500万円(大学卒業まで)
・老後資金:約2,000万円(公的年金以外)
・住宅ローン:約3,000万円(利息含まず)
必要総額:約6,500万円
【試算の前提条件】
・手取り収入: 夫30万円(共働き時は +妻10万円)
・住居費(月): 2,000万借入=8.7万円 / 3,000万借入=11.5万円(諸費用込)
・目標積立額(月): 60歳定年(20年)=14.6万円 / 65歳定年(25年)=11.7万円
| パターン | 定年 | 借入額 | 残る生活費 | 判定 |
| 単独 (手取り30万) | 60歳 | 2,000万 | 6.7万円 | 生活不能 |
| 共働き (手取り40万) | 60歳 | 2,000万 | 16.7万円 | 余裕なし |
| 単独 (手取り30万) | 60歳 | 3,000万 | 3.9万円 | 破綻 |
| 共働き (手取り40万) | 60歳 | 3,000万 | 13.9万円 | 破綻リスク大 |
結論:共働きで手取り40万でも生活費は14~17万。(常に働ける前提で)
2. ローンのために「今」を犠牲にしない
「せっかく家を買うなら、いい家を」という気持ちは痛いほどわかります。でも、家のために日々の暮らしがギスギスしてしまっては本末転倒です。
私たちは、家づくりの大前提となる「黄金のルール」を夫婦で共有しました。
「住宅ローンは、家計を圧迫する『重荷』ではなく、生活を支える『土台』であるべきだ」
このルールを守るためには、世間一般で言われる「新築ならこれくらい」という相場に合わせるのではなく、自分たちの資産形成のペースを崩さない、もっと控えめな予算設定が必要でした。
3. 「消費」する家から「守る」家へ
家は、放っておけばメンテナンス費用や固定資産税がかかり続ける「大きな消費」です。
特に新築は、購入した瞬間が価値のピーク。そこからは価値が下がる一方です。
「買った瞬間に資産価値がガクンと下がるものに、
一生分のローンを背負うのは、私たちの価値観には合わないかもしれない」
そう確信した私たちは、無理をして新築を追いかけるのをやめました。
代わりに、「中古物件を賢く選んで、余った予算を投資や貯蓄に回し、家計の体力をつける」という、守りの戦略へと舵を切ったのです。
次のステップへ
「新築ではない」と決めた私たち。次に直面したのは、「では、なぜ新築はあんなに価値が下がると言われるのか?」という、不動産の厳しい現実でした。
次回の記事: [03] 新築の「値下がりリスク」を考える:憧れと現実のバランス


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