「含み益が数日で消えてしまった」
「怖くて画面が見られない」
相場が大きく崩れるとき、私たちの心は激しく揺さぶられます。しかし、投資の成否を分けるのは、その瞬間にどれだけ「正しい計算」ができるかではありません。あらかじめ決めておいた「機械的なルール」を、どれだけ淡々と実行できるか。それだけです。
私は現役のシステムエンジニア(SE)として日々働いていますが、投資においても「感情」はエラーを誘発する最大のバグだと考えています。
本記事では、私が実際に運用している「VIX(恐怖指数)」と「移動平均線」を組み合わせた暴落対処法を公開します。この記事を読み終える頃には、あなたは暴落を恐れる側から、嵐の中で静かに「次の一手」を打つ側へと変わっているはずです。
1. ゴールは「10年後の資産最大化」である
まず、大前提を共有しましょう。私たちの目的は、明日の利益を当てることではありません。「10年、20年後に、家族や自分の未来を支える資産を築き上げること」です。
そう考えれば、今目の前で起きている数百万、数千万円のマイナスは、将来の大きなプラスへ向かうための「一時的なノイズ」に過ぎません。
投資の世界で生き残るコツは、パニックになって「投げ売り」をすることではなく、あらかじめ定義されたルールに従って「反応」することです。予測は外れますが、反応は裏切りません。
2. VIX(恐怖指数)で測る「市場の状態」
市場が今、どれくらい「パニック」に陥っているのか。それを客観的に教えてくれる指標がVIX(恐怖指数)です。私はこの数値をベースに、自分の立ち位置を以下の5つのフェーズで判断しています。
VIXを使った状態の目安
| 指標 | 状態 | 行動 | 戦略 |
| VIX 20以下 平常時 | 空は晴れ渡り、穏やかな追い風が吹いている状態 | 特に何もせず。 淡々と月々の積立継続 | 凪の時こそ、次の嵐に備えて「自分のポートフォリオが適正か」を見直しておくと尚良 |
| VIX 22~ 危機の入口 | 遠くで雷鳴が聞こえ始めた状態 | 資産整理開始。 利益率が極端に悪い銘柄や、中途半端な銘柄を整理し、現金の比率を少しずつ高める | 次に来るかもしれないバーゲンセールに備えて、弾(資金)を確保 |
| VIX 24〜25 嵐前夜 | 激しい雨が降り出し、ここからは大嵐or止むかの分かれ道 | 狙っている本命銘柄に「指値(この価格になったら買うという予約)」を入れ始め | 「さらに下がった場合」のシナリオを複数用意し、少しずつ網を張っていきます |
| VIX 28〜30 バーゲン開始 | 多くの投資家が恐怖で顔を青くし、手放し始める時期 | ここからは「買い」のフェーズです | 一気に買うのは禁物。さらに深掘りすることを織り込み、資金を2〜3回に分けて段階的に投入します |
| ⑤ VIX 31~ ボーナスタイム | めったに訪れない、 数年に一度の「お祭り」 | 超ラッキーだと考え、あらかじめ準備していた資金を薄く、広く指値でおいて待つだけ | 実際にはVIX30に届く前に反発することも多いため、「買えたら儲けもの」くらいの気楽さでエントリー |
「移動平均線(EMA)」と「RSI」で精度を上げる
VIXで大まかな季節を確認したら、次は移動平均線(EMA)とRSIを使って、注文を入れる位置を微調整します。
移動平均線(EMA)の活用
30日移動平均線(EMA30)との距離で「価格は常に平均に戻ろうとする」という性質を利用し、現在価が適正かを判断する基準とします。
- EMA30から乖離: 現在の価格が移動平均線から大きく下に離れている(乖離している)ほど、反発の期待値は高まります。
- 指値の位置: 移動平均線の少し上あたりに網を張っておくことで、戻り始めた瞬間の上昇を捉えやすくなります。
RSI(過熱感)をフィルターにする
RSIは売り買いの状態を数値化したものです。売られすぎ、買われすぎの目安にします。
- RSI 70以上: 市場が「お祭り騒ぎ(過熱気味)」です。VIXが低くても、新規で買うのはスルーします。(高掴みの回避)
- RSI 30以下: 逆に「売られすぎ」の状態。VIXの上昇とRSIの低下が重なったときこそ、私が最も自信を持って買い向かう瞬間です。
実際には、銘柄によってはRSI50以下になることは滅多にないこともあるので、60以下を基準にすることもあります。
3. 暴落時、最も大切にしている「3つの心得」
ルールを運用する上で、私が自分に言い聞かせている考え方は以下の通りです。
① 「機会損失」を最大のリスクと考える
多くの人が「底(一番安いところ)で買いたい」と願います。しかし、底を完璧に当てるのは不可能です。
底を待っているうちに相場が反転し、置いていかれる。この「買えないリスク」こそが、長期投資家にとって最大のダメージです。
「頭と尻尾はくれてやる」。この精神で、VIXが上昇している最中に「腹八分目」で確保しに行くのが、結果的に最も利益を残せます。

② 下落中の持ち株は「何もしない」がベスト
もし、自分の持っている株が暴落で含み損になっても、その銘柄が「10年後も生き残る本命」であるなら、答えは一つです。
「何もしないでホールドする」
価格が下がっている最中に慌てて売る(狼狽売り)のが、資産を溶かす最短ルートです。嵐が過ぎ去るのをじっと待つ。それも立派な投資行動です。
③ 「下げた分以上に、将来は上がる」という確信
過去100年以上の歴史の中で、世界経済は幾度もの暴落を乗り越え、そのたびに前の高値を更新してきました。
暴落は、効率の悪い企業が淘汰され、より強い企業がシェアを伸ばすための「新陳代謝」です。下げたら下がった分だけ、次に上がるためのエネルギーが溜まっている。そう考えれば、赤字の画面も少しはマイルドに見えてきませんか?
4. 悪い想定は「多め」に見積もる
最後に、私がこのような「攻め」の運用を続けられる本当の理由をお話しします。それは、最悪のシナリオをあらかじめ受け入れているからです。
整理の極意は「後悔」を先に消すこと
「売った後に上がったらどうしよう」と考えるのが人間の性です。しかし、VIX22という「危機の入り口」で整理を行う目的は、最高値で売ることではありません。
「もしこのまま底なしの暴落が来ても、納得して今の銘柄を持ち続けられるか?」
その問いに対して100%「Yes」と言える状態を作ること。それが整理の真の目的です。
【実例】2026年3月、イラン騒動で私が行った具体的な整理術
理論を知っていることと、実際に動けることは別物です。ここでは、つい先日(2026年3月)に発生したイラン情勢の緊迫化に伴う市場混乱の中で、私がどのようにルールを適用し、ポートフォリオを「大掃除」したのかを公開します。
トランプ政権(第二次)とイランの関係悪化による地政学リスク。連日ニュースが飛び交い、市場には不透明感が漂いました。この時、私の指標(VIX)は明確に反応しました。
① VIX 22到達:迷わず「整理」のアラートを鳴らす
VIXが平常時の20を抜け、22を超えた瞬間、私は「買い」ではなく「整理」のフェーズに入りました。地政学リスクによる下げは一時的なものになる可能性が高いですが、それが「いつ、どこまで下がるか」を予測することは不可能です。
予測できないからこそ、まずは「何が起きても耐えられる体制」を整える。これが私の鉄則です。
② 整理の優先順位:コストと「管理工数」を削る
整理対象を選ぶ際、私は以下の順序で機械的に売却を進めました。
ロボアドバイザーの全解約
真っ先に手をつけたのはロボアドバイザーです。分散投資としては優秀ですが、私が目指す「攻めのポートフォリオ」においては手数料(コスト)が相対的に高く、有事の際に機動的に動かしにくいと判断し、このタイミングで全解約しました。
一般口座で保有していた全銘柄の売却
次に着手したのは、特定口座(源泉徴収あり)ではなく「一般口座」で持っていた少額の銘柄たちです。これらを持ち続けることは、将来の「確定申告の工数」という目に見えないコストを抱え続けることを意味します。暴落という「きっかけ」を利用して、将来の自分への事務負担を削減しました。
「買った理由」が不明瞭なもののチェック
幸い、今のポートフォリオには「なんとなく買った」銘柄や、中身を理解していないアクティブファンド、リスクが見合わないレバレッジ銘柄は含まれていませんでした。もしこれらがあれば、迷わずキャッシュ化していたでしょう。
③ 最後に残った「精鋭」たち
整理を終えた結果、私の手元に残ったのは以下の銘柄だけです。
- 1545(NASDAQ100): 私のコア資産。
- NISA枠(オルカン・S&P500): 非課税枠の土台。
不要な枝葉を切り落としたことで、ポートフォリオは非常にシンプルで強力なものになりました。管理コストも下がり、次の一手(暴落での買い増し)に全神経を集中できる状態になったのです。
実際には、VIXは一時30を超え、EMAより低めに設定していた4段階の指値はすべて約定し、更に値下がりしました。一時的な含み損となりましたが翌週には大幅に反転し、現在は購入時比で10%以上急上昇する結果となりました。
今回、中途半端な銘柄をすべて手放したことで、私は「1545をガチホする覚悟」を再確認できました。この心理的余裕こそが、暴落時に最も頼りになる武器なのです。
5. 日常は「投資を忘れる」のが最強のメンタル管理
中長期の資産形成を考えているなら、「日常は投資のことを忘れている」くらいがメンタル的には最高です。常にチャートに張り付いていると、些細な変動でバグ(感情的なミス)を起こしやすくなります。
私は「moomoo」などのアプリを使い、以下の条件でアラート設定をしています。
- VIX 22超え(危機の入り口通知)
- NASDAQ100の日中下落 5%以上(急変の察知)
- RSI(12)が 60を下抜け(過熱感が収まった合図)
普段は暇な時に「なんとなく」見る程度。アラートが鳴らない限り、私は自分の人生を楽しみます。この「通知が来た時だけ確認する」という仕組みが、投資を生活の一部として継続させる秘訣です。
暴落は値上がる前の助走に過ぎない
投資における成功とは、一発当てることではありません。相場という試合会場に、最後の日まで居続けることです。
勘や運に頼らず、VIXや移動平均線という「指標」を見て、自分の現在地を知る。そして、事前に決めたプラン通りに手を動かす。暴落は、あなたのポートフォリオが更に上昇するための一時的な助走のようなものです。
数字に感情を乗せない。それこそが、私たちが辿り着いた最強の防御術です。
嵐が来たとき、この記事があなたの心を守る盾になり、次の一手を打つための武器になれば幸いです。
どれだけロジカルなルールを作っても、資産が減り続ける画面を24時間監視し続ければ、誰だってミスを犯します。
VIXが22を超え、整理を終えたら、次にやるべきは「チャートを閉じること」です。私には4種のインコたちがいます。画面の数字が荒れている時こそ、彼らと遊び、家族とコーヒーを飲む。中古で購入してリフォームしたお気に入りのリビングで過ごす時間は、暴落しません。
「変動しない価値」を生活の基盤に置いているからこそ、私は「変動する数字」に一喜一憂せずにいられるのです。
投資は、人生を豊かにするための手段であって、人生そのものを不安にするためのものではありません。嵐の中でもぐっすり眠れる、そんな「攻めつつも盤石な」ポートフォリオを共に育てていきましょう。
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